「超加工食品ってなに?」糖尿病が気になり始めたあなたへ贈る、専門医の解説

「超加工食品」が健康を害するデータが、近年増えています。 これらは工業的に作られ、添加物が多用されているのが特徴です。 特に、健診で糖尿病や予備軍とされた方は注意が必要です。 しかし、具体的に何を避けるべきか迷う方も多いはずです。 そこで、専門家の間で最近非常に注目されている概念があります。 それが「超加工食品(ちょうかこうしょくひん)」です。 なぜこれが糖尿病リスクを高めるのか、最新知見を解説します。
超加工食品とは何か?
まず、超加工食品の定義を確認しましょう。 一般的に「NOVA分類」という基準が使われます。 この分類では、食品を加工の度合いによって4つのグループに分けます。

- 未加工・最小加工食品(野菜、肉、卵、ミルクなど)
- 加工調味料(油、バター、砂糖、塩など)
- 加工食品(魚の缶詰、瓶詰め果物、焼きたてパンなど)
- 超加工食品
超加工食品は、糖分や塩分、脂肪が多く含まれます。 さらに、家庭の料理では使わない「添加物」が大量に使用されているのが特徴です。 具体的には、スナック菓子、カップ麺、清涼飲料水、大量生産された袋詰めのパン、冷凍ピザなどが該当します。

簡単に手早く食事を済ませようとすると、どうしても超加工食品の摂取が多くなりますね。
なぜ超加工食品が体に悪いのか

なぜ、これらの食品が糖尿病患者さんや、予備軍の方に良くないのでしょうか。 理由は主に3つあります。
まず、急激に血糖値を上げるからです。 超加工食品は食物繊維が取り除かれていることが多く、吸収が非常に早いです。 その結果、インスリンを出す膵臓に大きな負担をかけます。
次に、「もっと食べたい」という依存性が生じやすいことです。 精製された炭水化物と脂質の組み合わせは、脳の報酬系を刺激します。 さらに、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)への悪影響も指摘されています。 添加物が腸の炎症を引き起こし、インスリンの効きを悪くする可能性があるのです。

腸内細菌叢の悪化は糖尿病合併症や心臓病の発症リスクを高めるという研究結果が多く報告されています。
世界が注目する最新のエビデンス
それでは、超加工食品と健康の関係について、信頼性の高い研究結果をご紹介します。

10%の摂取増加で糖尿病リスクが15%上昇
フランスで行われた大規模な追跡調査(10万人以上が対象)があります1。 この研究では、食事における超加工食品の割合が10%増えるごとに、2型糖尿病の発症リスクが15%高まることが示されました。 したがって、日々のちょっとしたお菓子の習慣が、将来の病気に直結していると言えます。
無意識に「1日500kcal」多く食べてしまう
アメリカの国立衛生研究所(NIH)が行った非常に厳格な実験があります2。 入院中の被験者に「超加工食品中心の食事」と「未加工食品中心の食事」を2週間ずつ提供しました。 その結果、超加工食品のグループは、未加工食品のグループよりも1日あたり平均で約500kcalも多く摂取していました。 驚くべきことに、どちらのグループも「好きなだけ食べてよい」という条件だったのです。 つまり、超加工食品は私たちの満腹中枢を狂わせ、無意識のうちに過食を招くことが証明されました。
全死亡リスクとの関連
さらに、複数の研究をまとめた解析(メタ解析)では、超加工食品の摂取量が多いほど、心血管疾患や死亡リスクが高まることが一貫して示されています3。 このように、単なる「カロリーの問題」だけでは片付けられないリスクが潜んでいます。
専門医の視点:今日からできる対策
糖尿病専門医として、私は患者さんに「明日から一切、超加工食品を食べるな」とは言いません。 現代社会において、それは現実的ではないからです。 しかし、以下の3つのステップを意識するだけで、HbA1cの改善に繋がります。
- 「原材料ラベル」を確認する習慣をつける 裏面を見て、聞いたこともないような化学物質や添加物の名前が並んでいたら、それは超加工食品です。
- 「素材の形」がわかるものを選ぶ 例えば、リンゴジュース(超加工)ではなく、リンゴそのもの(未加工)を選びましょう。 コンビニでも、菓子パンの代わりに「おにぎり」や「ゆで卵」を選ぶだけで、加工の度合いはグッと下がります。
- 週に一度の「デトックス」から始める 平日は忙しくても、週末だけは加工食品を控えて自炊をする。 それだけでも、味覚が正常に戻り、濃い味付けや甘いものを欲しなくなります。

結語
「糖尿病かもしれない」と言われると、何を食べればいいのか不安になります。 しかし、難しく考える必要はありません。 まずは「超加工食品」を少しずつ減らし、自然の恵みに近い食品を増やすことから始めましょう。
HbA1cは、あなたの努力に必ず応えてくれる数字です。 食生活を少し見直すことが、10年後、20年後の健康な体を作るための第一歩となります。
参考文献
- Srour B, et al. JAMA Intern Med. 2020 Feb 1;180(2):283-291.
- Hall KD, et al. Cell Metab. 2019 Jul 2;30(1):67-77.e3.
- Pagliai G, et al. Br J Nutr. 2021 Feb 14;125(3):308-318.
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この記事を書いた人
都内の総合病院で糖尿病や内分泌疾患を専門に診療している医師です。総合内科専門医/糖尿病専門医/内分泌代謝科専門医/医学博士。年間2000人以上の糖尿病患者さんを診察しながら、学会発表や研究活動も行っています。このブログでは、日々の診療で感じた「患者さんが本当に知りたいこと」「わかりづらい医療情報をわかりやすく伝えること」を大切にしています。正しい知識を知ることが、安心への第一歩になりますように。
