糖尿病と認知症の関係とは?血糖コントロールと脳の健康

はじめに
糖尿病と診断されたばかりのとき、多くの方は心臓病や腎臓病を心配します。
しかし、見逃せないのが糖尿病による認知症リスクの上昇です。
本記事では、なぜ糖尿病が脳に影響するのか。糖尿病と認知症の関連を専門医の視点から解説します。
糖尿病はなぜ認知症リスクを高める?

血糖値が脳に与える影響
糖尿病と認知症の関連はまだそこまで深く知られていません。
高血糖状態は、脳内の血管を傷つけます。
血管障害が続くと、脳への栄養供給が低下し、認知機能が落ちるリスクが高まります。
さらに、糖尿病は体内の炎症や酸化ストレスを促進します。
これらの変化がアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβの蓄積にも関与します。
どれくらい認知症のリスクが上がるのか
- 2型糖尿病患者は認知症リスクが1.5~2倍1,2,3
- HbA1c8.0%以上ではリスクがさらに上昇4
- 7.0%未満を目指すことで、リスクを抑えられる可能性あり
エビデンス紹介
糖尿病と認知症の関連を示す論文をいくつかご紹介します。
代表的な研究
Chengらによるメタアナリシス1では、糖尿病患者はアルツハイマー型認知症の発症リスクが1.5倍と報告されました。
また、Gudalaらのレビュー2でも、2型糖尿病患者の認知症リスク上昇が示されました。
特に、血糖コントロールが悪い場合にリスクはさらに高まるとされています。
血糖コントロールと脳の萎縮や認知症
Launerらの研究4によれば、HbA1cが高い群ほど脳萎縮が進みやすいことが示されました。
また、Ottら3は空腹時血糖が高い人も認知症リスクが高まると報告しています。
専門医からのアドバイス
認知症を防ぐ、血糖管理の目標
- HbA1c 7.0%未満を目指す
- 低血糖を避け、安定したコントロールを重視
急激な血糖変動は、脳に悪影響を与える可能性があります。
日々の安定した管理が脳の健康を守ります。
認知症を防ぐ、生活習慣の工夫
- 毎日の有酸素運動(例:30分ウォーキング)
- バランスの良い食事(野菜・たんぱく質中心)
- 質の良い睡眠
- 適切なストレスケア
これらを継続することで、血糖だけでなく脳も守ることができます。
まとめ
糖尿病と認知症は密接なかかわりがあります。
糖尿病は、血管や神経だけでなく「脳」にも深く影響します。
特にHbA1cが8.0%を超えると認知症リスクが顕著に高まります。
しかし、今から生活を整え、血糖を安定させることで未来は変えられます。
あなたの大切な脳を守るために、今日からできることを始めましょう。
参考文献
- Cheng G et al. Diabetes as a risk factor for dementia and mild cognitive impairment: a meta-analysis of longitudinal studies. Intern Med J. 2012 Jul;42(5):484-491.
- Gudala K et al. Diabetes mellitus and risk of dementia: A meta-analysis of prospective observational studies. J Diabetes Investig. 2013 Mar;4(6):640-650.
- Ott A et al. Diabetes mellitus and the risk of dementia: The Rotterdam Study. Neurology. 1999 Dec 10;53(9):1937-1942.
- Launer LJ, et al. Effects of intensive glucose lowering on brain structure and function in people with type 2 diabetes (ACCORD MIND): a randomised open-label substudy. Lancet Neurol. 2011 Nov;10(11):969-77.

この記事を書いた人
都内の総合病院で糖尿病や内分泌疾患を専門に診療している医師です。総合内科専門医/糖尿病専門医/内分泌代謝科専門医/医学博士。年間2000人以上の糖尿病患者さんを診察しながら、学会発表や研究活動も行っています。このブログでは、日々の診療で感じた「患者さんが本当に知りたいこと」「わかりづらい医療情報をわかりやすく伝えること」を大切にしています。正しい知識を知ることが、安心への第一歩になりますように。