「本当に良い糖尿病外来」とは?

「糖尿病です」と告げられたとき、どんな病院に通ったらよいのでしょうか。
クリニック?大学病院?街には「糖尿病」を診る医療機関はたくさんあるけれど…。
糖尿病は生活習慣に密接に関係し、長く付き合っていく慢性疾患です。
だからこそ、最初の「医療機関選び」がその後の人生に大きな影響を与えます。
この記事では、糖尿病専門医の視点から、「本当に信頼できる糖尿病外来とは何か?」を、5つのチェックポイントに分けてお伝えします。
チェックポイント①:専門医が在籍しているか

糖尿病治療の質は、医師の専門性によって大きく左右されます。
「糖尿病専門医」は、日本糖尿病学会が認定する専門資格で、内科学・糖尿病学の高度な知識と臨床経験を有する医師に与えられます。
この資格を持つ医師が常勤しているかは、病院選びの第一条件です。
外来受付やホームページで確認できることが多く、「日本糖尿病学会の専門医名簿」もネットで検索可能です。

「日本糖尿病学会 糖尿病専門医」で検索し、地域で探すことが可能です。
→ https://www.jds.or.jp/modules/doctorsearch/
チェックポイント②:チーム医療が実践されているか
糖尿病治療では、医師一人だけで完結することはほとんどありません。
栄養指導を行う管理栄養士、血糖管理をサポートする看護師、薬の調整を行う薬剤師、合併症検査を行う臨床検査技師など、多職種の連携がとても重要です。
チーム医療を行っている施設では、患者一人ひとりに応じた細やかなサポートが可能になり、治療の継続率や血糖コントロールの質が高くなる傾向があります1。
チェックポイント③:通いやすさ(アクセス・診療時間・待ち時間)
治療が長期にわたる糖尿病では、「通いやすさ」が続けられるかどうかの分かれ道になります。
たとえば、以下の点が重要です:
- 自宅や職場からのアクセス(駅近か、車通院しやすいか)
- 土日診療や夜間外来の有無
- 予約制かどうか、待ち時間の長さ
通院が負担になってしまうと、つい受診が遠のき、治療中断や放置につながることもあります。
自分の生活リズムに合った外来を選ぶことで、治療継続のハードルを下げることができます。

基幹病院(大きな病院)では、どうしても待ち時間が長くなります。
待ち時間のストレスで定期受診が億劫になってしまっては本末転倒。
普段は「街のクリニック」、悪化したときは「基幹病院」といった「病診連携」も有効です。
チェックポイント④:糖尿病教育・自己管理支援が充実しているか
糖尿病は「自己管理」が成功のカギを握る病気です。
つまり、知識を得て、正しい判断ができるようになることが非常に重要です。
教育入院や糖尿病教室、看護師・管理栄養士による生活指導、自己注射やCGM(持続血糖測定モニター)の装着指導など、患者教育に力を入れている医療機関を選ぶことが大切です。

通っているところがクリニックであっても、通常は血糖値が悪化した際には近隣の提携病院で教育入院を行うことを勧められます。
チェックポイント⑤:最新の治療や機器に対応しているか
糖尿病治療は日々進歩しています。GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、CGM、インスリンポンプ療法など、新しい治療法や技術が次々に登場しています。
こうした最新技術を柔軟に導入し、患者に合わせて提供してくれる医療機関は、常にアップデートされている証拠です。
特に1型糖尿病では、インスリンポンプ療法と従来の注射療法では、インスリンポンプ療法のほうが明確に血糖管理が向上するというエビデンス3もあり、
専門医の視点
治療はマラソンです。
マラソンを上手に走るには、長期的な目線で患者さん自身が「信頼できる」と思える医療機関を選び、納得して治療を続けられているかに尽きます。
治療は医師任せにせず、医療機関選びから主体的に関わることで、より良い未来を手に入れることができます。
結語
糖尿病は、一時の治療では終わりません。
「どこで、誰と、どう治療していくか」を考えることは、あなた自身の人生設計そのものに関わる選択です。
今回紹介した5つのポイントをもとに、あなたにとって「信頼できる糖尿病外来」が見つかることを心より願っています。
参考文献
- Tricco AC et al. Effectiveness of quality improvement strategies for coordination of care to reduce use of health care services: a systematic review and meta-analysis. CMAJ. 2014;186(15):E568–E578.
- Norris SL et al. Self-management education for adults with type 2 diabetes: a meta-analysis of the effect on glycemic control. Diabetes Care. 2002 Jul;25(7):1159-71.
- Beck RW et al. Effect of Continuous Glucose Monitoring on Glycemic Control in Adults With Type 1 Diabetes Using Insulin Injections: The DIAMOND Randomized Clinical Trial. JAMA. 2017 Jan 24;317(4):371-378.

この記事を書いた人
都内の総合病院で糖尿病や内分泌疾患を専門に診療している医師です。総合内科専門医/糖尿病専門医/内分泌代謝科専門医/医学博士。年間2000人以上の糖尿病患者さんを診察しながら、学会発表や研究活動も行っています。このブログでは、日々の診療で感じた「患者さんが本当に知りたいこと」「わかりづらい医療情報をわかりやすく伝えること」を大切にしています。正しい知識を知ることが、安心への第一歩になりますように。
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